AO FILED RECORDING GUIDE-1

 暖かくなってきましたねー。海の方も水温も上がり、湘南の海は人が一杯です。心無しか波の音はやはり春、ということもあり、静かな感じがします。今月中旬に上がったKAERU CAFEの映画”斜陽”。ここで使う海の潮騒の音、波の音、海の街の音、等を録音しに朝、夕方と出かけてました。ですがなかなか良い音が録音できず、というか映像に合った音が録音できず、ずいぶん音を探して歩きました。春は春の音がありますねー。そんな今日この頃。では本題に入りましょう!

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1、まずは同時録音でしょう
 さてやっとField Recording(今後FRに省略します)のお話に入ります。今までは私が経験してきたお話をしてきました。この経験をふまえてこれからお話をしていきます。まあ一概にFRとは何か、といわれると返答に困ってしまいますが、私的にはスタジオを出て、外での(まあ室内も含みますが)Recording全般をFRと呼んでいます。ですのでスタジオ以外でセリフを録音する事も全てFRというのかもしれませんねー。プロになる前は、いろんな音を録音しにいきましたが、ほぼFRしかしていない、ということになります。音響ハウスに入り、確か1月から見習いで行っていましたが、3月に同時録音の仕事がある、ということで行くことになりました。同時録音について研修で話は聞いていましたが、実際にこんなに早くやることができるとは思いませんでした。とにかく先輩に機材の説明を聞いて、おおよその仕事内容を確認し、その前日はほぼ興奮して眠れなかった事を今でも覚えています。

 撮影の仕事は早朝から行われ、5時には制作会社の前に集合して機材を積み込みます。私以外はプロとして慣れている方ばかりなので、テキパキと仕事は進んで行きます。初めてのロケバス、前夜は眠れなかったせいかバスの中で熟睡してしまいました。そんなこんなで現場につきました。現場は古本屋さん。いわゆるロケになります。撮影の場合はスタジオ、ロケセット(撮影用につくられた施設)、ロケがあります。そのなかでもっとも自然条件に厳しいのがロケです。最初の仕事が厳しいもので、本当に大変です。

 とりあえず“これを役者に向ける”と言われたものがガンマイク。使用したのはSennheizer MKH-415Tというマイクでした。古本屋さんの中で役者2人がしゃべるというシーンで、これにガンマイクを向けるのが私の初仕事でした。ガンマイクということなので私がやった最初の行動は、ガングリップを両手で握り、役者を撃つようにかまえることでした。狭い空間でブームが使えなかったのでこのようになったのですが、周りはけっこう笑っていました。当然役者も私がガンマイクを初めて使う、というのはあからさまにわかったようで”そんなんで撃たないでねー”などと冷やかされました。でも本人は何を言われているのか分からない・・・それでそのままの格好で狙っていたら、先輩にうしろから叩かれました!「片手で狙え!」と言われてやっと我に返って片手で狙い始めました。やってみると、なんだか少しは格好がついてきました。午前中の作業でコツが少しづつ掴み慣れて来た頃、今度はカメラマンに怒られました。「写ってるよ!」???あー、カメラにマイクが入ってるんだー。ということで、今度は狭い場所だけどブームを使うことにしました。これは便利!最初から使えばよかった。

2、同時録音はField Recordingの第一歩
 という具合に我が人生初の同時録音の仕事が終わった訳です。今までは効果音を録音したり、自分のGuitarを録音したりしていましたが、人の声をこのようにして録音する、という事は今までにありませんでした。この時は全くのアシスタントですから、どのような音で録音されていたかは見当がつきませんでしたが、スタジオに戻ってから音を聞いた時の衝撃はいまでも忘れられません。その場所場所での声の感じは大体覚えていましたが、録音されていた音はそれとは全然違う音になっていました。役者の声は私にははっきり聞こえていましたが、録音されている音は“声に芯がない”というか、少しポイントがずれているような音になっていました。さらに周りのNoiseが結構入り込んでいました。古本屋さんは大きな道路に面していて、かなりの交通量があったのですが、マイクを持っている私のポジションでは、あまり車の音は気になりませんでした、ですがマイクの方は気になっていたんですねー。声は聞こえてはいましたが、周りの車の音の方が断然大きく入っていました。この時代は同時録音はあまり期待されておらず、状態が悪かったら、すぐにスタジオでアフレコ(※After Recording)をするのが当たり前でしたから、ミキサーの先輩もあまり言わなかったのでしょう。たしかに現場では「ガイドでいこうよ、今回うるさいから」などと、いろんな人が言っていましたからねー。このとき私は無念の気持ちがあったのを覚えています。ガイドなんて言われていることは“まあとりあえず適当に狙っておけば良い”と言うこととイコールで、“お前の狙った音は誰も期待していないんだぞ”と言うことになるんですよね。愕然!!!!

 と言うことで、人間の耳で聞いた感じと、マイクの位置では微妙に音が違う事がわかりました。それとガンマイクは普通のマイクとは違い、振動板の位置などの関係で狙い方が違う事もなんとなくわかってきました。普通はマイクを向けた方向に音源が、、、“まあこのロケの場合は人の口があればしっかり音が録音できる”と思っていましたが、ガンマイクだと若干マイクを下の方に向けて、振動板がある辺りを口の方に向けると、割としっかりとした音が録音できるんですねー。しかし、ブームなどに付けた状態でこの理論を実践しようとすると結構不思議な角度になったりするのですが、それでもしっかりとした音がすれば芯がきている、という証拠ですから、まあ形はあまりこだわらない方が良さそうですね。

3、ロケにはまっていく自分
 段々とマイクの向け方がわかってくると、今まで諦めていた録音、例えば「ガイドで良いからさー、回しておいてよ!」何ていう失礼な言葉に過剰に反応するようになってきます。どうにかしっかり録音してスタジオに戻って聞かせて「やっぱり同時録音って良いね」と言わせてみたい、という反骨精神が最初の年から芽生えてきました。私が特にこだわっていたのは、外での同時録音。ガンマイクには優れた装置(装置と言って良いのかわかりませんが)があります。それはスリットと呼ばれるもの。なんか溝がいくつか切られているんですねー。音源に向ける方向とこの溝の向きを変える事によって、音源以外の音のLEVELが増減することがわかってきました。これを上手く使うと、いらないNOISEが減少されるのではないか、という考えを元に、仕事で試すことにしました。試すといっても仕事なので、おおっぴらに人には言えません。あくまで自分だけで試す、ということになります。違っていたらチ−フが指摘するはずですから。

 音響ハウスに入社した最初の年は、とにかく私は同時録音が多かったです。多分80本くらいは行ったのではないでしょうか?・・・何だか毎日行っていた記憶があります。ですので、色々なことを試すには本当に最高の環境でした。撮影も外が圧倒的に多く、いつもロケバスに乗っていたので、車両部の人とも仲が良くなりました。そしていつも大体同じチーム(といってもいくつかグループがあるのですが)でしたので、段々と“録音部”という感じになっていきました。Mixerは毎回変わりますが、ブームはほとんど私が担当していたので、いろんなしきたりを覚えましたねー。やはり照明部、撮影部としっかりコミュニケーションがとれると仕事がかなりスムーズにいきます。逆にコミュニケーションがとれない人は、けっこう難しいかもしれませんねー。

 そんなことで、ロケです。毎回色々な場所に行きます。現場に到着すると“どういう風に録音しよう”考えます。ノイズの方向性、役者の位置、自分の立ち位置、カメラの位置などなど。この当時のカメラは今のカメラと違って結構Noisy(※動作音が大きかった)だったんです。ですので、カメラが近いとノイズが入って来て困ってしまいます。特にワイドレンズの時は要注意。映像は近いのですが、マイクがなかなか寄れない状況が出てきます。Mixerは絵を見て「もっと寄って」などと指示したりしますが「寄れないんですよ!」などと結構言い争いになります。こんな時はMixerの言う通り寄ってみたりしますが、大体寄らなくていいよ」などと返事が返ってきます。

 ロケの場合は絵コンテが重要になってきます。絵のつながりをしっかり覚えておかないと、音のon/offが激しくなり、最終的につなげた時に変な感じになる事が多いようです。ですのでアップの場面だからと言って、ただ寄るだけでは難しいことになります。これは監督やMixerと相談ですね。

 あと基本はFRなので、背景にある音の動き、存在もしっかり認識していかなければなりませんねー。私的に好きなのは“映像的に切り取られた音”です。まあこれは深い話になるので、次回にしましょうね。

 まあとくかく外でのロケは大好きで、スタジオ撮影といわれると、ちょっと面白くなかったです。けどこれはいまでも変わらないんですね(笑)。いまでもロケ大好き。なんか今回は本当にとりとめもない話になってきましたので、これまで。来月は同時録音から派生した録音のお話をしていきましょう。では!!

 

 
 
 
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