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全身でゴスペル音楽を浴び、歴史の流れに浸る! 教会で聴くピーター・バラカンさん選曲音源の数々  ~「ゴスペル温故知新」初開催にFOSTEXが機材協力~

2026.09.16
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教会の空間で珠玉のゴスペル音楽を紹介していくバラカンさん

※本記事では、人名や史実などのカタカナ表記について、ピーター・バラカンさんのご助言により、実際の発音により近い表記を採用いたしました。

ロックやブルーズをはじめ、様々な音楽ジャンルに影響を与え続けてきたゴスペル。そのゴスペルが育まれてきた空間である「教会」に、ピーター・バラカンさんをお招きして、歴史を辿りながら名音源の数々を楽しむ特別イヴェント「ゴスペル温故知新」が2026年2月に開催されました。異文化が交錯する歴史のゴスペルのように、東京でもとりわけ国籍、文化が入り混じる新大久保コリアン・タウンの喧騒と対照的に、荘厳な姿を見せる淀橋教会。スパイスの香りも漂うエスニックな街の雰囲気から隔絶されたようなモダンな空間のチャペルは、バラカンさんのDJとトークを楽しみにする音楽ファンで満席に。普段は百名規模の礼拝が行われるチャペルで、バラカンさん選曲音源を皆さんに届けたのは、FOSTEXのスピーカーでした。今回の「ゴスペル温故知新」を企画したGOSMAC代表の佐佐木さんに、ゴスペル音楽の歴史的名盤を教会の空間でどのように聴いたのか、そしてバラカンさんのお話を聴いて何を感じたのか、お聞きしました。

満員御礼となった淀橋教会小原記念チャペル(2026年2月19日)

― 今回初めて開催した「ゴスペル温故知新」はどのような趣旨で企画したのか、お聞かせいただけませんか?

私が主宰している一般社団法人GOSMACでは、海外のゴスペル・シンガーのコンサートを開催することもありますが、国内でゴスペルを歌う機会を広げようと様々な活動をしています。ゴスペル音楽というと、日本でも大ヒットした映画「天使にラブ・ソングを」を、多くの人は思い浮かべると思います。この映画でも印象的な、クワイヤー(聖歌隊)として、皆で歌いながら一体感を楽しむことを、魅力に感じている方が、日本のゴスペル音楽ファンには多いかも知れません。
しかし、ゴスペル音楽の魅力はそれだけではありません。私自身、神学校や教会での仕事をしておりますが、ゴスペル音楽は、キリスト教において主イエスを讃美するという宗教的な要素が根底にあり、その歴史的な背景にも興味深い話がたくさんあります。その背景を知ると、さらにゴスペル音楽を楽しめるし、さらに多くの人にゴスペル音楽の魅力を伝えることができるのではないかと考えました。
あるとき、ピーター・バラカンさんの著書「魂(ソウル)のゆくえ」を知る機会がありました。読み進めるとブルーズやR&B等のお話がメインに、様々なレコードが紹介されているのですが、冒頭では、ゴスペル音楽が紹介されていました。日本ではゴスペル音楽を一つの音楽ジャンルとして表面的に捉えている傾向があります。この著書にも書かれている、アメリカ社会で黒人を中心に命懸けで音楽を培ってきた側面もあるゴスペルの奥深さについても、多くの人に知ってほしいと思いました。

バラカンさんとご一緒したいという想いが叶ったと語る佐佐木氏

― ゴスペル音楽のイヴェントというと、参加者も歌に参加するイメージを持ちますが、今回はDJショー形式でした。

ピーター・バラカンさんが、ゴスペル音楽だけでなく様々なジャンルの幅広い知識をお持ちで、日本にたくさんの音楽を紹介してきた方であることは皆さんもご存知だと思います。テレビやラジオ番組で精力的にご活躍されるだけでなく、日本全国でDJショーを開催しています。バラカンさんにお願いするのであれば、バラカンさんが慣れている形式で、イヴェントを開催したいと考えました。バラカンさんにご相談してDJショーで、ゴスペルの歴史を辿っていく内容をお願いすることにしました。
そのときに、ゴスペル音楽をテーマとするのであれば、やはり教会で開催したいと思いました。DJでスピーカーを通して音源を鑑賞するのであれば、百名弱くらいの空間が良いと考えたときに、淀橋教会の小原記念チャペルが良いと思いつきました。この小原記念チャペルだけでなく、淀橋教会ではゴスペル音楽のイヴェントが定期的に開催されています。より多くの人にバラカンさんのお話をお届けするには、数百人規模のもっと大きい会場も良いと考えましたが、大きな教会は残響が多く、歌うイヴェントを開催するときも音響の調整で苦労します。千人規模の教会だと残響が5秒以上あるような場合もあります。今回は、バラカンさんのDJで録音音源を再生するので、できるだけクリアに聴いていただけるよう、あまり広い空間ではなく、また教会としては残響時間も比較的短い小原記念チャペルで開催することにしました。

― その音源再生に使用したスピーカーはFOSTEXの協力でした。

今回チャペルでFOSTEXのスピーカー(NF06)を目にしたとき、私自身がアメリカで音楽活動をしていたときのことを思い出しました。いわゆるDTM(デスク・トップ・ミュージック)の黎明期でしたが、今では考えられないくらい大きなアップルのコンピューター等、当時は最新鋭の録音機材を、ガレージを改造したスタジオに持ち込んで、レコーディング作業をしていました。そこでモニター用として使用していたスピーカーがFOSTEXだったのです。FOSTEXのスピーカーは、他にはない独特な見た目をしているように思います。今回のスピーカーも、当時使っていたモニター・スピーカーと同じような、いかにもプロの道具のような佇まいを感じました。思い返すと当時、違和感なくレコーディング作業に集中できていたのは、FOSTEXのスピーカーが、歌ったり演奏するアーティストや、エンジニアにとって、自然に感じられる音だったからのように思います。

スタジオ・モニター用スピーカーNF06で音源を再生

― チャペルの空間でスピーカーの音を聴いていかがでしたか?

比較的小さい教会として選んだ小原記念チャペルですが、それでも一般的な住宅の三階以上の天井の高さはあり、残響も多少はあるので、どのように聴こえるか最初は想像がつきませんでした。そこに、本来はスタジオで使用するモニター・スピーカーでしたから、素直で味付けをしない音に、適度な残響が加わったのだと思いますが、教会でゴスペル音楽を歌ったり、あるいは聴いたりするときと同じような感覚で、バラカンさんが紹介する音源を、私自身も楽しませていただきました。低音を強調するようなスピーカーではなく、プレーンな音のモニター・スピーカーであったのが良かったのだと思います。教会というゴスペル音楽が生まれた空間で、音楽に感動しながら、バラカンさんのお話を聞くことができたのが良かったと思います。

― 音楽と共にバラカンさんの解説を聞いて、どのようなことを思いましたか?

最初に申し上げましたが、やはり日本では、ゴスペル音楽と聞くと、(映画「天使にラブ・ソングを」に見られるような)クワイヤーで合唱する演奏スタイルをイメージする方が多いです。そのようなアメリカを中心とするゴスペル・クワイヤーのコピー演奏が日本では主流です。今回バラカンさんが紹介したゴスペル音楽には、様々なスタイルのものがありました。バラカンさんはゴスペルの録音が残る最初期の1900年代から年代順に様々な録音を紹介していきましたが、年代による特徴の違いがあることはもちろん、演奏スタイルが様々であることに驚かれた方も多かったのではないかなと思いました。
スタイルは多様でありながらも、ずっと教会で歌い続けられてきたのがゴスペルですから、その現場である教会で、歴史を辿りながら、さらにバラカンさんの解説とともに音楽を楽しむというのは、普段ゴスペル音楽を楽しんでいる方にとっても、そうでない方にとっても、音楽好きな方であれば刺激的な体験になったのではないかと思います。

― ただオーディオで名録音を鑑賞するというのを超えた、圧倒的な音体験だったと私は感じました。バラカンさんのお話を含めて、特に印象的だった楽曲は?

どの楽曲のお話も印象的でしたが、ここでは、オープニングで紹介された楽曲と、最後にエンディング曲として流れた曲の二曲を紹介したいです。今回のイヴェントで最初の一曲目に紹介された音源は1909年の蝋管での録音と思われるフィスク・ジュビリー・シンガーズの「スイング・ロウ・スウィート・チャリオット」でした。ブラック・ゴスペルのルーツである黒人霊歌(スピリチュアル)で、本イヴェントの最初の音源ということで、5分近くの再生時間だったでしょうか、じっくり時間をかけて、会場の皆さんに聴いていただきました。一般的にイメージされるゴスペル・クワイヤーとは異なる、ゆっくり祈りをささげるような厳かな歌声で、聞き入る来場者の皆さんと一緒に、会場が一つになったような感覚でした。
もちろん、それ以降に紹介された曲でも同じような会場の一体感を感じました。もしもこれが教会ではない空間で、オーディオで音楽を再生するだけでは、生演奏を聴く擬似体験として録音を鑑賞するだけになってしまったかも知れません。ゴスペル音楽が歌い続けられてきた舞台である教会だからこそ、歴史的音源を聴くことが特別な体験に感じられたのではないかと思います。バラカンさんの選曲の背景にある歴史を、ただ知識として理解するだけでなく、その当時の録音を、教会の空間で、全身で音を感じながら聴いたのが良かったと思います。

いよいよイヴェントが始まり最初の曲を紹介するバラカンさん

― 最初の一曲目を聴いたとき、バッハ以前の古代や中世の宗教音楽を聴いているときと同じような感覚になりました。

クラシック音楽は、グレゴリオ聖歌のようなヨーロッパの教会で歌われていた音楽まで歴史を遡ることができます。クラシックやジャズは、学術的な書物だけでなく、歴史を扱った映像コンテンツ等、インターネットを含めて情報が豊富です。一方、ゴスペル音楽では歴史を体系的に扱ったものはあまりありません。ゴスペルの時代は、二十世紀初頭から始まり、公民権運動、世界恐慌、二つの大戦といった、近現代の様々な出来事が起きた時代でした。歴史的な出来事とともに、ちょうど録音技術も進化する時代であったことから、様々な録音が残されており、当時の演奏を聴くことができます。クラシック音楽は、作曲家が生きていた当時にどのように演奏されていたかは、古い作曲家であればあるほど、知ることが難しくなるので対照的です。ゴスペル音楽は、そのジャンルが生まれた初期の音楽がどのようなものであったか、実際に演奏された録音を聴いて知ることができるのは、面白いと思います。
最初期の録音技術によると思われる音源である「スイング・ロウ・スウィート・チャリオット」を紹介しながらバラカンさんは、元来、黒人霊歌は、今日のゴスペルのように広く人前で歌うものではなく、白人と別の教会で歌われるものであったという、ブラックミュージックの原点についてお話されました。さらに、このフィスク・ジュビリー・シンガーズは、南北戦争終結の翌年(1866年)に奴隷解放された若者たちのために作られたフィスク大学(解放された奴隷及びアフリカにルーツを持つ若者が通うナシュヴィルの大学)が、その資金集めのために結成された(1871年)といった史実についても、バラカンさんはお話されました。

天井高い小原記念チャペル(開演前の一コマ)

― 私も一曲目からとても興味深く聴きました。二時間で年代を追って十曲以上の紹介がありましたが、イヴェントの最後に流れた曲はいかがでしたか?

バラカンさんが最後に選んだ曲は、日本のゴスペル・ブームの火付け役となったエドウィン・ホーキンズの「オー・ハッピー・デイ」でした。この楽曲は、ゴスペル音楽の中でも最も有名な楽曲の一つで、様々なアーティストが歌い、録音を残しています。日本でもゴスペル音楽のイヴェント等で歌うことが多く、ゴスペル音楽を象徴する楽曲ですが、ともすると「聴き飽きた」イメージもある曲です。バラカンさんは、映画ならエンドロールで流れるような曲として、今回のイヴェントのお客さんをお見送りする、この楽曲を最後に持ってきました。バラカンさんが紹介するなら、誰が歌った音源を紹介するのだろうと気になるところですが、それが歌ではなく、スティール・ギターと思われる楽器による演奏だったのです。私も初めて聴く録音でしたが、その演奏の繊細さからは、祈りのようなゴスペルらしさが感じられました。ゴスペル音楽の一般的なイメージとは異なるのですが、歌がないのにゴスペルらしさが確かに感じられ、あっという間の二時間を名残惜しく感じながら振り返りました。「オー・ハッピー・デイ」の後半になると来場者の皆さんがポツリポツリと立ち上がり、会場を後にする姿をお見送りしました。きっと、来場者の皆さんそれぞれが、自身が好きな歌手の「オー・ハッピー・デイ」を心に浮かべていたのではないかと思います。

定番ソング「オー・ハッピー・デイ」で来場者を見送るバラカンさん

― 最後の曲はインストでしたね。歌だけではなく、伴奏の楽器演奏についてもバラカンさんから興味深いお話がたくさんありました。

イヴェントの冒頭に戻りますが、1900年代だった一曲目に続いて、少し年代が進み1920年代の録音が二曲紹介されました。それらも歌の特徴とともに、楽器と関連する興味深いお話がありました。二曲目は、ワシントン・フィリップスの「デノミネーション・ブルーズ」で、「バプティスト」や「メソジスト」といった宗教の宗派(デノミネーション)の争いをやめ、神の前では皆一緒だという内容の歌です。そのメッセージは、分断が進む現代にこそ響くものではないか、とバラカンさんから問いかけがありました。内容とともにバラカンさんがお話しされたエピソードには、伴奏で使用されている特徴的な音色の楽器が、ドルセオラと呼ばれる、現在では詳細が不明の珍しい弦楽器だというお話もありました。1900年代初頭の当時の録音が残っていることで、時代の流れによって失われてしまった楽器の音色に触れることができ、タイムスリップしたような感覚でした。

中には弦楽四重奏団が伴奏に加わった楽曲の紹介も

― 二曲目ワシントン・フィリップスの「デノミネーション・ブルーズ」に続く三曲目、ブラインド・ウィリー・ジョンスンの「トラブル・スーン・ビー・オーヴァー」はいかがでしたか?

この曲も1920年代の録音で、ブラインド・ウィリー・ジョンスンは路上で歌っていた盲目のギタリストだったということで、歌声もギターも味わいが感じられる演奏です。ブルーズらしさを感じるわけですが、この時代のブルーズとゴスペルは、音楽的には全く同じで歌詞が宗教的かどうかだけの違いだったという当時の音楽ジャンルについてバラカンさんからお話がありました。後に、別の楽曲(「ダーク・ワズ・ザ・ナイト、コールド・ワズ・ザ・グラウンド」)が、後年(1977年)ヴォヤジャー探査機に搭載された、宇宙人に向けて地球の音を紹介するレコード(ヴォヤジャーのゴールデン・レコード)に、ブルーズ音楽の代表曲として収録されたという話も興味深かったです。また、レコードといえば、当時アメリカではラジオが急速に発展した時代にあり、1920年代は経済状況が良く、レコード会社が地方の田舎に出向いて録音(フィールド・レコーディング)が行われていた、比較的余裕がある時代だったという、当時のアメリカの世相にも話題が広がりました。アーティストのエピソードと、その時代時代のエピソードが結びつくと、音楽は音楽単独で存在するのではなく、そのときの社会背景にも強く影響を受けているという当たり前のことを再認識しました。

― バラカンさんのお話も興味深かったのですが、やはり音楽にも心動かされる瞬間があったと思います。特に印象的だったことはありますか?

イヴェントの中盤で1940年代まで時代が進み、シスター・ベシー・グリフィン「ヘヴンズ・レイディオ」をバラカンさんが紹介したときは、バラカンさんご本人もリズムに合わせて身体を揺すりながら、彼女の歌声を楽しんでいらっしゃいました。にこやかに会場に向かって「皆さんも手拍子をどうぞ」と呼びかけられると、会場の皆さんも手拍子を始めて、曲の最後まで鳴り止みませんでした。バラカンさんは、この時代はゴスペル音楽の黄金期だと指摘されていましたが、この後に紹介された選曲でも、度々、手拍子が会場から湧き起こる瞬間があり、会場一体で音楽を楽しむことができたのは、皆で歌うゴスペルのイヴェントと同じような感覚だなと思いました。

バラカンさんの呼びかけで会場が一体となって手拍子

― 荘厳なチャペルの空間で聴く音楽体験は、個人的に音楽を楽しむのとは異なり、格別な体験だと思いました。

そこまで大きい空間ではないものの、ある程度天井の高さもあるチャペルでしたので、リハーサルではFOSTEXの仲前さんに、スピーカーの高さや、設置位置等、様々な調整をしていただきました。来場者の皆さんが着席したときの、耳の高さにスピーカーを設置した方が良いのか、あるいは天井を考慮して少し高い位置に置いた方が良いのか、また二つのスピーカーの間隔の距離によっても聴こえ方が変わるか等、様々なパターンを試していただきました。調整の要素が色々ありましたが、天井が高いチャペルの残響もあるので難しかったと思います。最終的には客席の左右はもちろん、前方でも後方でも、どこで聴いてもクリアさが失われずに聴こえるよう、バランスを入念に調整していただきました。

リハーサルにおいてFOSTEX仲前氏と共に会場の音を確認するバラカンさん

改めて今回のイヴェントを振り返ると、音楽に感動した!という実感が思い起こされます。もちろんバラカンさんの選曲とお話があってのことですが、様々な音源をスピーカーで鳴らし、チャペルの空間で聴いてみること自体が、想像を超える音体験だったと思います。楽曲によっては歌う本人が目の前にいるかのように感じることもありましたし、カルテットのハーモニーや、大人数のクワイヤーの音は、教会でゴスペルをライブで聴くときのように、チャペルの天井から音が降り注ぐように感じる瞬間もありました。スタジオ用モニター・スピーカーなので、本来の用途とは異なる使い方なのでしょうが、もう一度、今回と同じように教会の空間でFOSTEXのスピーカーで聴いてみたいと思いました。教会の空間でのゴスペルDJイヴェント、今後もバラカンさんと一緒に続けていきたいです。

教会の空間にバラカンさん選曲音源を響かせたスピーカーNF06

― 来場者の皆さんからは、続編を望む声もありました。

「ゴスペル温故知新」というタイトルには、ゴスペル音楽そのものだけではなく、ブルーズやR&Bといった、ゴスペルが、他のジャンルに与えた現代への影響も含めて、魅力を伝えていきたい、実はそんな想いを込めて名付けました。今回の二時間だけでは「知新」まで辿り着けず、「温故」だけになってしまったかも知れません。バラカンさん自身も会場で「プレイリストが二時間に収まらない!」と笑っておられましたが、ゴスペル音楽の歴史、「温故」だけでも数回のシリーズができてしまうのではないかと思います。私自身ももっとバラカンさんのプレイリストとともにお話を聞きたいと思いますし、バラカンさんに相談して、是非とも続編を開催したいと思っています。特にゴスペル音楽のハーモニーは、今回もバラカンさんが紹介したブルーズ(ブラインド・ウィリー・ジョンスン等)だけでなく、ロック、ポップまで、様々なジャンルに影響を与えています。そのあたり、現代にも踏み込んだ「知新」の内容についても、バラカンさんのお話を聞いてみたいと思います。ゴスペル音楽に親しんでいる方だけでなく、ディレクター(指導者)こそバラカンさんのお話を聞いて欲しいと思います。もちろん、普段はゴスペル音楽を聴く機会が少ない音楽ファンの皆さんにも、教会でのゴスペルの様々な録音を聴く体験をして欲しいと思います。

― 続編は一回だけでは終わらなさそうですね!続きを楽しみにしています。どうもありがとうございました。

バラカンさんとともに(左FOSTEX仲前氏、右GOSMAC佐佐木氏)

ピーター・バラカンさんからのメッセージ

ぼくはキリスト教徒ではありませんが、ゴスペル・ミュージックが大好きです。最初はそれほどでもありませんでした。世代的に10代半ばに大流行していたソウル・ミュージックのファンになったのはごく自然な成り行きでした。その後ブルーズもジャズも聞くようになり、そのうち全部がつながっていることに気がついたのです。そしてそのすべてのルーツがゴスペルとその前にあった霊歌にあることも分かりました。あからさまな宗教的メッセージの強い歌詞には一時期は違和感がありましたが、それよりも歌い手の情熱と揺るぎない信仰心による歌のパワーに圧倒され、言葉を越えた音楽体験を楽しむようになりました。

決して専門知識があるわけではありませんが、このイヴェントを通してそんな熱いゴスペル・ミュージックをお伝えできたらと思います。

ピーター・バラカン (Peter Barakan)
1951年8月20日ロンドン生まれ。1973年、ロンドン大学日本語学科卒業。1974年、来日、著作権関係の仕事に従事。1980年から執筆活動、ラジオ番組への出演などを開始、また1980年から1986年までイエロー・マジック・オーケストラ、後に個々のメンバーの海外コーディネーションを担当。1986年から独立し、放送番組の制作、出演を中心に活動中。

ジョシュア佐佐木
国立音楽大学大学院修士課程修了、ヴィオッティ音楽院修士課程修了、欧州と北米にてオペラ歌手として活動。その後ゴスペル歌手に転向し、全米ツアーを敢行。帰国後はゴスペル音楽の普及に尽力すると同時に、公益財団法人日本オペラ振興会(藤原歌劇団)事務局長、日本ゴスペル音楽協会理事長、アチーブメントプロデュース株式会社取締役などを歴任。現在、一般社団法人GOSMAC代表理事、一般社団法人EE JAPAN評議員、NPO法人LOVE EAST共同代表、日本ゴスペル音楽協会上席顧問、東京基督教大学講師、NSCT顧問牧師。

取材・文・写真: 加藤 太一(公益財団法人日本科学技術振興財団・科学技術館)
科学技術をテーマとする国や企業等によるイヴェント等の企画・運営業務に従事。財団入団前2017年まで在職していたフォスター電機株式会社においてスピーカー関連業務に携わった経験を活かし、2020年から音について学ぶFOSTEXスピーカー工作教室の科学技術館や学校等における開催に協力。「ゴスペル温故知新」でも扱われる録音技術等、音に関するハードの技術面に、ソフトとしての音楽が持つ魅力を組み合わせ、子どもの探究心のみならず大人の知的好奇心も満たしていくような取り組みに関心を持っている。